全国銀行協会、不渡り猶予を年末まで延長

 東日本大震災の影響で企業が支払い期日に手形の決済ができない場合に、特別の猶予策として、不渡りとしない処置を全国銀行協会がとっているが、これを年末まで延長するというニュースがあった。通常は、企業は2度不渡りを出すと、その企業はブラックリスト入りし、全ての口座が凍結され、ほとんどの場合は倒産となる。不渡りはいわば、イエローカードというわけだ。(ちなみに、金融機関の場合は、一発でレッドカード、即口座凍結となり、これが、金融システムをガラスのような脆性破壊させる原因となっている。)津波の被害を直接受けた企業はもちろん、それらの企業と取引をしている企業は、お金の流れが極端に悪化しているので、このような猶予処置は、企業を存続させ、再起させるのに非常に有効だ。国の対処は何につけても非常に遅れているが、民間の対応は素早く適切である。
 新聞によれば、3月から7月の不渡りの件数は、岩手・宮城・福島の3県だけで、およそ3000件あり、昨年の4倍にもなるという。復興をめざす企業を再生するためには、不渡りの猶予だけでなく、国や公的な機関からの資金の援助や、投資や融資のお金を集めることが必要だ。企業を経営するためには、様々な経験に基づくノウハウが必要であるから、全く新しく企業を作るよりは、壊れた企業を回復する方がずっと効率的だ。お金さえかければ、元に戻せる企業には人がいる間にお金をつぎ込んで再生した方が経費の節約にもなる。経済的な自立を求められている被災者にとって、働く場所がなければ自立のしようがないのであるから、企業をできるだけ沢山普及することは、国や県も最優先で進めるべきだ。
 直接被災した地域だけでなく、遠く離れた地域にある企業も、取引関係で非常に密接に被災地域と結び付いているケースも多い。そういう企業にも丁寧に光を当てて守らないと、被災地域の企業が復興しようにも、取引先がなくなっている、というようなことになりかねない。つまり、企業の救済は、企業の取引ネットワークを分析しながら行う必要がある。
 もし、ほっておいた場合には、どれくらいの企業が倒産し、どれくらいの経済的な損失になるか、どれくらいのお金を注入すれば、どれくらいの企業を救うことができて、何年後にはどれくらいの経済的な発展を期待できるか、そのような計算をデータに基づいてシミュレーションを行い、見積もることが必要とされているわけだ。
 実は、今、私達(私と、東京工業大学の高安美佐子研究室と、帝国データバンク社)は、このような目的の企業ネットワーク解析の研究を進行中である。詳細は、時期が来ないと発表できないが、ともかく、震災の復興に本当に役立てられるような形で、急ピッチで研究を進めている。これまでは、比較的のんびりとアカデミックな視点で研究をしていた経済物理学の分野であるが、この2,3年が、本当に社会の役に立てるような学問になれるかどうかの正念場であると思っている。