財政再建の道:相続税の改革に着手せよ

 ブログの更新が2週間以上滞ってしまった。8月下旬締め切りの仕事が貯まってしまい、小学校の時の夏休みの宿題が最後の1週間に大きくのしかかって来た時のような余裕のない状態になっていたのが大きな原因だった。
 さて、民主党の新しい内閣のチームが決まり、政府はこれからとてつもない大きな宿題をこなしていかなければならない。自民党時代から積み上げてきた最大の宿題は、財政の立て直しと震災の復興だ。今度の総理はこれらに真剣に取り組むということなので、どのような行動に移るか、注目したい。
 もしかすると少しは参考にしてもらえるかもしれないという期待を込めて、財政再建に関する私案を提案する。結論を先に言えば、相続税を見直すことで財政再建は自動的にうまく回りだすはず、というのが私の考えだ。
 日本の頼りは、1000兆円を越える個人の金融資産で、現在はこのお金が金融機関で渋滞している状態だ。日本の経済は成長期を20年ほど前に終え、成熟期に入っているので、体(社会インフラ)が勝手に育っていた当時に有効だった金融システムと同じ方法では、お金が増やせなくなっている。お金は物やサービスと交換することで初めて本当のお金としての価値を生み出すのであるから、流れないお金、あるいは、金融機関の間を行き来しているだけのお金は存在しないものとほぼ同じである。金融機関が適切にお金を回せなくなっているのであるから、個人のレベルで持っているお金を直接流すようにする政策が有効ということである。
 日本にある個人の金融資産の半分以上は、リタイアした世代が老後のため、子孫のために貯めているお金である。したがって、相続税を変更することで、大きなお金の流れを生み出すことができる。ちなみに、現状の相続税は、年間の総相続額がおよそ30兆円に対し、税収は1.5兆円程度、つまり、お金の流れに対してかかる税率は実質的には消費税と同等の5%である。私の提案は、わかりやすく極端に表現すると、現金・銀行口座のお金と国債に対する相続税は100%、それ以外の全て、土地・建物・貴金属・美術品・株式などは0%とせよ、というものだ。国が発行したお金は、所有者が亡くなった時点で全て国に返し、それ以外のものは、国は一切関与しない、という立場だと言ってもよい。
 世界を見渡すと相続税が0%という国はけっこうあり、そのような国は、お金持ちに住んでもらって生活に伴うお金の流れから税をいただこうとしている。上記のように物に関して非課税にすることで、お金持ちは住みやすくなり、大きな土地に立派な家を建て、高価な調度品を揃え、貴金属を蓄える。また、株式を非課税にすることで、企業主も子孫に企業を残しやすくなる。資産家に居やすい環境にすることでお金持ちが喜んで住み、国に富を貯め込んでくれる国にするのだ。豪邸は後世の観光遺産になることも考えれば、大金持ちが住みたくなる国にすることは長い目で見ても悪くない。
 このようなお金の流れが生じれば、まず、お金の流れに対して消費税などが入る。いわば贅沢品の需要が増えるが、贅沢品を作り価値を維持するためには高度な知識や技術の集積が必要で、単純労働ではなしえない高度な産業が必要とされ、雇用のニーズも増加する。このような高度の労働は、海外の安い労働力と戦うためには必要な方向性だ。海外の貴金属や美術品を買い集めるようになれば、大量の円が外貨に換えられるので、円安の方向にお金が流れる。1兆円の介入でおよそ為替レートは1ドルあたり1円動くのがこれまでのデータからわかることであるから、例えば、30兆円くらい海外の価値の高いものをまとめ買いすれば、1ドル100円くらいのレートに戻る可能性もあり、輸出産業を助けることにもつながり、一挙両得だ。使ったお金はものに代わって国に残るので、国としては何も損はない。
 このようにものの対する相続の非課税化は、いいことづくめであるが、マイナス面として懸念されるのが、国債が相続できない、ということになったときの国債大暴落である。これに関しては、国のお金は国が責任をとる、という方針で、売れなそうな分の国債でどうしても予算立ての上で必要な分に関しては、日銀が全て買い取る、という臨時の対策が最善の案であると考える。上記の方法で、1000兆円のお金が流れ出せば、確実に社会の中のお金の流れは大幅に上昇し、相続税以外の税制は現在のままでも、政府の税収の大幅アップが期待できる。そうなれば、一時的に中央銀行が預かった国債も近い将来の税金でつじつまを合わせることができると期待する。このように貯金を有効に使うことで問題を解決できるのは、借金に苦しむ諸先進国の中では日本の特権である。
 震災復興に関しては、既に、このブログの中でも私案を紹介しているが、不動産証券化をベースにした民間のお金を有効活用することで資金繰りをすることが可能であると考える。もちろん、復興プランを作れるようにする段階までの被災地の整理に関しては国のお金を使う部分も必要だが、これは、発展途上国の経済と同様に、お金をかければその分だけ社会の価値が上昇するので、ニーズがあるところにお金を使うことに躊躇する必要はない。