国債問題がこれから数年間の最重要課題になる

今日のニュースでも、ギリシャ国債がデフォルトする危険性やアメリカがこれ以上の国債の発行ができない状態になり困っているという報道がされていました。2008年のリーマンショックからの金融危機は、主要国が協調して国債を発行して金融業に貸し付けることによってなんとか回避できましたが、ヒビの入ったガラスをテープで補強しただけのような状態ですから、危機を少しだけ先送りしたようなものだと認識しておくべきです。
 そして、今、本屋さんに行くと、「国債暴落」、というキーワードの本が山積みになっています。最近、その中の対象的な2冊を読みました。上念司氏の”日本は破産しない!”と、山崎養世氏の”ジャパン・ショック‐国債暴落から始まる世界恐慌”です。
 国債が暴落するという話は多いので、上念司氏の”国債の暴落は起こり得ない”という主張に興味を持ちました。主な内容は、次のようにまとめられます。
1:日本国債金利は他国の国債よりも低く、これは日本国債が市場でよく売れていることを表す。
2:外国人投資家が日本国債を手放し、円をドルやユーロに換えると為替レートが円安方向に相当額動き、円安になり日本の製造業などを中心にした輸出産業が潤うので日本の景気がよくなる。
3:複式簿記で評価すれば、国の借金に見合う資産がどこかにあるので借金だけを見てはいけない。国全体の資産は5590兆円、負債は5322兆円でまだまだ資産が多い。
4:円はデフレで低金利だが、貨幣としての価値は下落しにくいので円高傾向が続いている。
5:ハイパーインフレの発生条件は、生産設備・流通網の徹底的な破壊、短期かつ急激な労働力不足の発生、さらに、大量の紙幣発行、の3つが必要条件であり、日本はその心配はない。
6:国民性も背景も、日本はギリシャとは大きく異なる。
7:むしろ、さらに国債を発行して、市中に流通する貨幣量を増加することで景気もよくなり、いい方向に向かう。
 というように、大変な楽観論で、一理あるところもありますが、そううまくはいかないのではないかと思いました。特に、日本人の資産家が円で資産を持ち続け、さらに、日本の金融機関も国債をいくらでも買い続けるという前提をおいていますが、本当に危ないと皆が思いだすと、お金持ちも企業も我先にと国を出ていく心配があります。
 対象的なのが、山崎養世氏の”ジャパン・ショック”です。フィクションとして、ある日、日本の国債が売れ残る「不落」が起こったとすると、金融市場で何が起こり、それがどのように波及していくかを金融の現場での勤務の体験に基づいて語っています。国債がう残ることが大地震震源だとすれば、その直後から津波が発生し、金融市場を一掃し、さらには、次第に私たちの生活にも大きな影響を及ぼす、というシナリオを非常に臨場感のある形で語っています。私が実際にデータを解析しているのは、為替の市場だけで、国債金利の市場は見たことがありませんが、秒単位で変動する市場のセンスから判断すれば、山崎氏の語るようなパニック的な集団行動が発生する可能性は非常にもっともらしく聞こえます。
 また、山崎氏のいうように、国債はそもそも麻薬のような社会を悪くするものである、という主張も説得力があります。国債をリスク0と評価する銀行に対する国際的なBIS規制そのものが日本の金融機関をダメにした、という説明もなるほどと思わせます。津波を回避するための方法、津波後の対策、などに関しても以前から私が考えていたことと共感できる点が多々ありました。
 実は、昨晩、ある著名な国際金融が専門の大学の先生と一緒に食事をしながら話をしましたが、やはり、数年以内の国債の連鎖的な破綻は、かなり真剣に考えているとのこと。大手金融機関で実務に携わっている人達にも折あるごとに聞いてみるのですが、やはり、国債の暴落は、検討済みのシナリオとして考えている例が多いようです。
 避けられればよいのですが、世界中に貯まっている国債の連鎖暴落という金融大震災への心の準備はしておく必要があるようです。