地熱をもっと活用すべきだ

原子力に代わるエネルギー源として、太陽光や風力が注目されているが、地熱にはもっと注目すべきだ。 私は、東北大学に在籍していた当時、科研費の重点領域として地熱開発のプロジェクトに参加していた。地熱というと火山地帯でしか利用できないようなイメー…

企業通貨プラン

先にも紹介したように、私がバスケット型の複合通貨システムを考えたのは、大学を辞めてソニーに移って間もないころ、ソニーの財務担当者から、為替の変動によって企業が儲かっているのかどうかすら誰にもわからなくなっている、という話を聞いたのがきっか…

ゲージ理論と外国為替市場

絶対的な時間軸や空間軸というものは存在せず、それぞれの観測者における時間軸と空間軸は相対的に決まるものだ、という考え方の正しさを1905年にアンシュタインは相対性理論の中で明らかにした。時間の進む速さやものの大きさを測るものさしそのものが人に…

おごれるものはひさしからず:東京電力、エンロン

東京電力は放射能の問題で事実上、破綻した。責任を負うことになる賠償金の額は未だにはっきりしないが、東京電力の資産価値を大きく上回ることは確実だ。「原子力の事故は起こらない」、という根拠のない信仰がどれだけ被害を大きくしたか、大いに反省する…

通貨の非線形性

拙著「エコノフィジックス(日本経済新聞社)」や「経済物理学の発見(光文社)」にも既に書いていることであるが、通貨の非線形性について、改めて、指摘したい。 非線形性とは、1+1は2ではない、という性質である。1万円+1万円と2万円とでは、もち…

国家が発行する以外の通貨の形態

通貨は国が発行するという常識は、実はそれほど長い歴史を持っているわけではない。例えば、江戸時代、通貨は各藩が発行し、また、有力な商人は地域で通用する通貨を発行していた。両替商は、このような複雑な通貨の交換を行うことで利益をあげていたわけだ…

国家が発行する以外の通貨の形態

通貨は国が発行するという常識は、実はそれほど長い歴史を持っているわけではない。例えば、江戸時代、通貨は各藩が発行し、また、有力な商人は地域で通用する通貨を発行していた。両替商は、このような複雑な通貨の交換を行うことで利益をあげていたわけだ…

国債起因の金融危機を回避する方法:複合通貨システム

昨日の記事にも書いたように、多くの国の借金が増加し続け、その量がしだいに臨界点に近付いているようだ。日経BPから出ている『国家は破綻する』という分厚いしっかりした本も勉強中であるが(この本は過去の事例を丁寧に冷静に記述しており、非常に科学的…

国債問題がこれから数年間の最重要課題になる

今日のニュースでも、ギリシャの国債がデフォルトする危険性やアメリカがこれ以上の国債の発行ができない状態になり困っているという報道がされていました。2008年のリーマンショックからの金融危機は、主要国が協調して国債を発行して金融業に貸し付けるこ…

アインシュタインと魚雷開発

アインシュタインは、ラッセルとともに核兵器反対宣言をし、核兵器を廃絶するためのパグウォッシュ会議を開催するなど平和主義の物理学者としての評価が高い。しかし、アインシュタインには、戦争の加害者としての側面もいろいろとある。 まず、1905年の原子…

無駄減らしの効果を普及させる方法:1%の直接還元はどうだろう?

歩留まりの改善は、地味な作業である。画期的な新しい商品を作るわけではなく、既存の商品を製造するための無駄を減らしてコストカットをするだけだから。しかし、その効果は実は非常に大きい。 新しい商品を開発して、大きなヒットを産めば、桁違いの大きな…

歩留まりデータ解析を始めたいきさつ

私が半導体工場の歩留まりデータの解析に取り組むことになったいきさつをもう少し詳しく紹介する。 2006年11月、ソニーはプレイステーション3を発売したが、そのおよそ1年半ほど前、私に「Cellチップの製造データの解析を手伝ってもらえないだろうか」、と…

コンピュータの進化と経済物理と半導体の歩留まり解析

昨日は、日本学術振興会のシステムデザイン・インテグレーション委員会というところで、「経済物理学のデータ解析と製造工程管理への応用」という題で話をしてきた。この委員会は、主に半導体の専門家が次世代の半導体のチップの集積方法やデザインの仕方に…

大航海時代の追加話題:外国為替システムを構築したメジチ家

大航海時代に関連して、もうひとつ紹介したい話題は、ルネサンスのパトロン、メジチ家である。メジチ家は銀行業で財をなしたのであるが、金利を付けてお金を貸していたわけではない。当時、金利で儲けることは、神にそむく大罪だったから、そのような方法で…

最初の経済物理学者:コペルニクス

地動説を提唱したことで有名なコペルニクスは、近代物理学の創設者の一人として高く評価されているが、経済学者としても高い評価を得ている。彼は、いわば、世界最初の経済物理学者である。 コペルニクスが活躍した16世紀初頭は、大航海時代の始まりの時期だ…

ニュートンの晩年は造幣局長官

ニュートンの物理学と数学への貢献を知らない人はいないが、彼が造幣局長官として英国の経済の発展に大きな寄与をしたことを知る人はそれほど多くないのではないだろうか? 大学教授の職に疲れて50代半ばから造幣局に転職し、貨幣の鋳造の責任者になったニュ…

ハレーに学ぶ社会・経済に応用する物理学の発想

ハレー彗星で名を残しているエドモンド・ハレーは、ニュートンとほぼ同時期に活躍した物理学者であるが、現在の社会・経済に潜在的に大きな影響を及ぼす研究もしている。それは、年金制度や生命保険の考え方を提案したことだ。 当時、世界で初めて、網羅的な…

経済システムを脆性破壊から塑性変形へ

2008年秋の金融危機以来、私は、経済システムは脆性を有しているという持論を展開しています(2009年3月に東工大で開かれたAPFA7という国際学会で発表し、日本語の原稿としては『情報社会学概論』という本の中にも書いています。秋に東大出版から出る『金融…

イスラム金融に学ぶ預金の金利

金利を前提としないイスラム金融を応用する住宅ローンの話を紹介しましたので、今回は預金の金利について議論します。 人々の収入には予測できない変動があり、また、事業を起こすなどの場合にはまとまった大きなお金が必要になりますから、国の東西、宗教や…

イスラム金融に学ぶ住宅ローン パート2

昨日の記事に対して、Yuta Kashinoさんより質問をいただきましたので、返事が長くなるので、改めてここで説明を加えます。 第一の質問は、「住宅ローンをノンリコースローンにすることによって購入者のリスクを減らしてインセンティブを高くできるのではない…

イスラム金融に学ぶ住宅ローン

ここ数年、私は、金利という簡単で便利なお金の流し方そのものが金融の世界に絶えず歪を発生し続けるマントル対流のような役割を担っていると考え、歪を発生させないような新しいお金の流し方ができないか、思案しています。金利がコーランの中で明確に否定…

”宮崎哲弥のトーキング・ヘッズ”の収録

昨日、スカパーやケーブルテレビで放送されている朝日ニューススターというCSデジタル放送の”宮崎哲弥のトーキング・ヘッズ”という番組の収録がありました。放映は、今週6日金曜の夜9時から、”「想定外」と確率〜巨大災害、大恐慌の発生メカニズムを探る”と…

税収を増やすならさらに相続税の改革を

5月1日のブログのコメントに相続税の改正に関する話が上がりましたので、相続税に関して考えていることを書かせていただきます。 相続がらみのドラマなどが多いせいかもしれませんが、日本にはなんとなく相続税は高いというイメージがあると思います。しかし…

ゆらぎがゆらぎをよぶ自己変調過程

昨日の記事に書いたように、地震には地震をよびよせるメカニズムがある。地震は、地下の岩盤にかかっている応力が脆性破壊によって瞬間的に解放される現象であるが、一か所の応力が解放されると、その周囲の歪の分布が変わり、応力の再分配が起こるからだ。…

余震に関する大森の法則と定常性、そして、地震保険

地震学の分野で最も重要な経験的法則は、地震のエネルギーの大きさ分布に関するグーテンベルク・リヒターの法則と余震の発生頻度に関する大森の法則である。前者は、地震のエネルギーをEとしたときに、エネルギーがEよりも大きな地震が次に発生する確率、 P(…

農業型か狩猟型か:企業の成長の統計性と金利の問題

私はこの数年、共同研究者らと膨大なデータを分析しながら企業の統計性を分析してきて、企業は農業よりは狩猟に近いものと考えるようになった。農業は、多少の天候の善し悪しはあっても、おおよそ畑の面積に比例した収穫があり、安定した収入が見込める。そ…

エアロゾルのベキ分布も要注意

原発から大気中に拡散された放射能物質の問題は、当面、新たな放出が抑えられているようで少し落ち着きを取り戻しつつある。そのような状況ではあるが、新たな不安を引き起こすかもしれないことになるような知見を紹介する。それは、エアロゾルのベキ分布に…

リアルシムシティとしての震災復興

多くの人が今なお大変困難な避難生活をされている中で、不謹慎と気を悪くされる方もいらっしゃるのを承知で、今日の記事を書く。それは、今後の被災地の復興を、”シムシティ”の現実版として多くの人に楽しく参加してもらえるようにしよう、という提案である…

”想定外”やベキ分布を制御するにはどうすればよいのか?

ベキ分布に対しては平均や標準偏差という通常の統計学における最も基本的な統計量が意味を持たない。4月13日の記事の中で述べたように(右のカレンダーの4月15日をクリックして、そのなかの4月13日分”なぜ保険・備蓄ではだめなのか”をご覧ください)、これら…

豊田利幸先生の思い出と科学者の社会的責任

名古屋大学に入学した最初の2年間、私の指導教官は、2009年5月に89歳で亡くなられた素粒子や原子核の研究をしていた物理学者の豊田利幸先生だった。科学者としてのモラルを先生の生き方から学び、自分の研究の方向性も先生の言葉で決まったとも言える。 先…